自然観察園のみどころ

樹木配置図沿革自然観察園と賢治植生植物
オープンギャラリー(野外彫刻)ひょうたん池岩山

自然観察園の植生

(市街地の緑地)

 ある土地に生育している植物の集まりの全体を植生といいます。植生には、人間が植えたり、刈ったり、伐ったりした人為植生と、そのような人間の影響(破壊)をほとんど受けてない自然植生があります。

 自然観察園の植生は、ほとんどの樹木が植えられた典型的な人為植生ですが、市街地に残された貴重な都市緑地です。

 同じ都市緑地の公園や街路樹の植生は、大気汚染に耐える樹木や目立つ花の樹木、それに植木類や郷土の樹木などからなります。自然観察園の植生は、高等農林樹木植物園の時代から、植物学、林学、造園学の教育のために集められた多種多様な樹木からなっています。

 植物は、芽生え、成長し、種子を散布し、枯死します。その結果、植生は時間とともに変化します。これを遷移といいます。これまでの観察園の管理では、できるだけこの自然に起こる遷移にまかせ、新たな植栽や伐採を避けてきました。その結果、30mを超す巨木に生育した個体もみられますが、下生え(林床植生)の植物の多くが消えたり、台風で樹木が折損、枯死したところには、帰化植物などが侵入したりしました。

 このような自然の変化を現地で観察し学ぶことも、観察園の重要な役目です。


自然観察園に咲くトサミヅキ


自然観察園の植物

(観察園の植物)

 ある土地に生育している植物の種類の全体を植物相といいます。40haほどの観察園の植物相は1986年(昭和61年)の調査にり、66科182種の種子植物が生育し、木本植物は14科155種、1100個体が確認されています。

 観察園の木本植物の95%は、内外の多様な生育地から集められ、植えられた種です。郷土種のブナやカツラ、里山の薪炭林のコナラ、カスミザクラ、植林地のアカマツやスギも外国から導入された林業種のアメリカハリモミやストローブマツ、園芸種のサクラ類、カエデ類やツツジ類、西南日本に自生するトサミズキ、公園や街路樹のイチョウ、ケヤキ、ヒマラヤスギなど、植物相は樹木の見本園的な特色をもっています。

 ある土地の植物の開花期間をカレンダーにしたものを、花暦といいます。観察園の植物についても花暦がつくられています。3月上旬のマンサクの開花から始まり、4月中旬のコブシ、下旬のソメイヨシノと11月まで、草木植物も含むたくさんの植物の花がいつ見られるか一目でわかります。現在、この暦はインターネットでどなたでも見ることができます。

自然観察園に咲くキクザキイチゲ


自然観察園オープンギャラリー(野外彫刻)

 大学キャンパスをのんびり散歩してみませんか。植物園、自然観察園や中央食堂前には彫刻が設置され、緑の中の展示空間です。見るだけでなく、直に触れることで、より身近に作品を鑑賞していただけます。四季折々の自然の中でくつろぎながら彫刻との対話をお楽しみください。これらの野外彫刻は、ただそこにあるだけではなく、周囲の環境と調和を考え、より良い景観をつくりだす目的があります。また、彫刻には、作家や設置者の願いや意図、見る人へのメッセージが潜んでいます。それぞれの彫刻の背景を調べてみるのも、野外彫刻の楽しみ方の一つかも知れません。


自然観察園のひょうたん池


 教育学部自然観察園の最も奥にある「ひょうたん池」は、観察園内にある岩山のさらに奥にあります。ここは、北上川の河岸段丘のすぐ下にあり、地下水によって昔から湿地を形成していたと考えられます。

 また、後は緑豊かな傾斜地になっており、池は人目につかない場所にありますが、それだけに落葉の堆積する柔らかい水底を持ち、落ち葉を餌とするさまざまな昆虫や貝類が棲息しています。

 一例を挙げると、ここにはホタルがいます。数が少ないために種は確認していませんが、毎年7月下旬から1週間、柔らかい光を放ちながら、夏を謳歌しています。ホタルがいるということは、ここの水がきれいだということです。しかし水は澄んではいません。ただ、人工物質が少ないのだろうと予想しています。人間の手が必要以上に入らない池もどうぞ観察してみてください。


自然観察園の岩山

 植物園がつくられた当時の写真には、岩を積んだ2つの小山が見えます。左方は早池峰山を、右方が岩手山を模したものといわれています。岩手県を代表する高山から高山植物を採集し、それぞれの岩山に植込んだようです。

 低温で成長が遅く、陽地を好む高山植物などを低地で育てるため、できるだけ生育地の環境をつくるのがロックガーデンの手法です。ロックガーデンには、いろいろなルートで種が運ばれ、芽生え、急速に成長し、日陰がつくられ、陽地に育つ高山植物は消えていきます。

 植物園時代の岩山の高山植物も、ほとんどが消えてしまいました。わずかに、北側岩山の北西の麓に植えたブナとヨーロッパブナが、大木に成長し生き残っています。

 中腹のコメツガも残っていますが、ブナやオニグルミに覆われて枯れかかっています。現在の岩山には、周囲から種で侵入した、コナラ、ヤマグワ、オニグルミ、ヤマモミジ、イボタノキ、コブシ、ニワトコなどが旺盛に生育しています。

 高山植物が可憐な花を咲かせた往時のロックガーデンを想像することさえ難しい、植生景観になってしまいました。自然保護が叫ばれる今、早池峰山や岩手山の高山植物園を復元することは不可能です。

 岩山にふさわしい植生をあらたに創造する必要がありそうです。

植物園の岩山  すぐ後方には分科園の樹木、さらに遠方の厨川の

柵が臨まれる。(「創立第十周年記念帳」(1913年9月)より複写

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