宮澤賢治のモニュメント

 賢治の花巻農学校時代も終わりに近い大正15年、学校付近の畑で撮ったといわれている写真が、モチーフになっています。帽子を被ってうつむいている様は、どこかベートーヴェンに似ています。制作者は、本学教育学部の藁谷収教授です。素材は、賢治の作品によく登場する安山岩です。横に広がる像は、賢治精神が未来へとつながっていくイメージを表現しています。

 賢治の在学当時、東北地方の冷害は深刻きわまるものでした。そのため、盛岡高等農林学校には、海外で研鑚を積んだ多くの優秀な教授陣が迎えられました。賢治が師と仰いだ関豊太郎教授も、その一人です。関教授は、当時の農学界を代表する著名な土壌学者で、「グスコーブドリの伝記」に登場する「クーボー博士」のモデルにもなっています。

 賢治は、地質学的色彩の強い土壌学を深く学んだとされています。その頃、岩手地方の洪積台地の多くは、酸性黒ボク土で覆われ、地味の悪い痩せた土地の改良が強く望まれていました。賢治は、得業論文(現在の卒業論文)で腐植黒ボク土中の無機成分の肥沃度を取り上げ、土壌リンを可給態にするには焼土法が良いと結論づけました。