上田の杜、圧巻シナサワグルミ

 明治新政府が軍需材適樹の保護増殖とともに外国樹種導入に深い関心を示したことは、当時の国情からして至極当然のことで、歓農寮農学所が中心となり、地方では北海道の試験場が中核的に施策を推進しました。

 こうした流れのなか、高等農林学校では創立以来早くから敷地内各所に多くの外国樹種を植栽配置しました。植物園内には、クログルミ、クロヤマナラシ、アメリカスズカケノキなどの巨木が今でも天を突かんばかりの勢いです。しかし、何と言っても、圧巻は旧自啓寮南のシナサワグルミ(一名カンポウフウ)です。

 本種は、中国の北部・中部に分布、植物園では本邦産のサワグルミと仲良く林冠を形成しています。灰白色の樹皮は強靭で織布や縄に適し、軽くて柔らかい材は茶箱、桶類のほか印材にもうってつけです。

堅果の翼が狭くて長いシナサワグルミ