自啓の森

 昭和50年に旧盛岡高等農林学校時代からの校舎の跡地を新たに農学部附属植物園として整備を始めました。整備が進むなか、昭和60年、宮澤賢治も室長をつとめた学生寮(自啓寮)跡地に、「郷土森林生態観察モデル林」を造成することとなりました。造成面積約3,000m2、計画段階で既に「自啓の森」と呼ばれていました。岩手の山野における典型天然生林を模し、とくに階層構造を表現するのがコンセプトでした。3ブロックに分けられ、アカマツ-コナラ群落、コナラークリ群落、ブナ-ミズナラ群落の導入が図られました。

みごと林冠が閉鎖し、植物園にいながら岩手の山野の落葉広葉樹二次林(いわゆる雑木林)の雰囲気に浸ることができます。雪解けの頃には、冬芽のわずかな膨らみが厳しい風雪の終焉を教えてくれます。陽射しの熱い頃には、重畳たる葉群が直射光をさえぎり沈思の場としてくれます。狭いエリアのなかに多数の樹木を入れた関係で、被圧木や衰弱木が目立ち、林床が貧弱な点は否めません。しかし、森林造成学サイドでは、落葉広葉樹二次林の格好の教材となっており、関心をもち足しげく通う学生が少なくありません。